『はてしない物語』原作"Die unendliche Geschichte"
映画好きのための「ニューシネマパラダイス」
ならば
ファンタジー物語好きのための
「はてしない物語」
と言っても過言ではないでしょう
この本のファンだった方には
ぜったいに
ぜったいに
一度オリジナル版を見てほしいです
日本語版でもそうでしたが
この本、インクの配色とストーリーがリンクしてますよね
装丁デザインでしょ、そんなのと言ってしまえば簡単ですが
こんなにファンタジー心をくすぐるすばらしい児童書はありません
そんな名作「はてしない物語」
残念ながら原作はドイツ語で、ドイツ語版なんてそうそう日本ではお目にかかれません
国内の図書館でも見たことはありません
なのでほんの少しだけ中身をご紹介します
ほんとうに素敵なので・・・
最初のページ。
Die unendliche Geschichte
と書いてあります
ドイツはグーテンベルク活版印刷を生んだ国
中世の活版文字フォント、素敵すぎ
そしてその下には
Von
A bis Z
mit Buchstaben und Bildern
versehen von
Roswitha Quadflieg
AからZまでの
文字と挿絵は
ロースウィタ・クワドフリーク画
というわけです
バスチアンが古書店の扉を押し開けるあのシーン
反転した看板文字はこんな風
各章の扉絵になっていたアルファベット
これも原作ではちゃんと各章の文章の初めの単語の最初の文字になっています。
Aは
Alles Getier im Haulewald duckte sich...
と始まる文章の“A”なんです
Zまで全部の章がそうなんですよ
Xなんてどういう単語で始めたのかと思ったら
Xayíde(サイーデ)のXでした。
なんてすてき
わたしは日本語を読んで育ちましたが
原作の原版にはやはりかなわんですな~
ドイツ語の学習者には強くお勧めしたい一冊です。
児童向けの文章なので、中級以上の方ならそれほど難解ではありません。
ドイツ語で読めて良かったぁ!!!となること間違いなし。
☆☆☆ここから先は2020年7月の追記☆☆☆
pipietanさまからコメントでお尋ね頂いた「さすらい山の古老」の章で梯子をのぼる場面のドイツ語ページです。
この場面は縦書きの日本語だと再現不能な手法で記されています。
まずは見開きで。
このページは頭から大文字の梯子で始まります。
日本語訳ではカタカナ・漢字になっています。原文の方では「!」も句読点も使われておらず、大文字のみで梯子が作られています。
この見開きだけで梯子を登り始め、登り降り、一気にバスチアンが『はてしない物語』の題字を発見して驚くところまで描かれています。
最初のページ
幼ごころの君が大文字のはしごを上っていくとき、読者の方では、逆にはしごをくだるように文を下へ読み進めています。
さらに、幼ごころの君がいったん登るのを休み、上を仰ぎ見る場面では、作中の幼ごころの君が見ているはしごはページの中では下へ向かって続き、読者の方はすでに読み終えたページを見上げることになります。
バスチアンがファンタージエンの深部にどんどん近づいていき、幼ごころの君の方のあちらの世界もこちらへ向かってぐんぐんと近づいてくる、このはしごの列を下って読み進める読者にもそのことを体験させるページとなっています。
この場面の手法、ご指摘いただくまで気づきませんでした。
読み手を巻き込みながら物語と現実の世界を交錯させる場面!すごい文章の技ですね。